ファッションディレクター・スタイリスト
長谷川昭雄の
第七回

ファッションと映像、その正解。

島本 塁さん
映像ディレクター
今シーズンのモデルになってもらった人たちに、
スタイリスト長谷川昭雄が気になることを
聞いてみる対談シリーズ。
第7回は、元編集者であり、
現在は映像ディレクターとして、
広告やミュージックビデオなどの映像製作をおこなう、
島本塁さんにお話を伺いました。
島本 塁
あれ、俺、鼻毛出てない?
長谷川昭雄
大丈夫(笑)。
島本
じゃあ良かった。たまにすごい鼻毛が出てることがあるんですよ。
長谷川
じゃあ鼻毛は、出てても気にならないってことではないんだ?
島本
そりゃそうだよ。ハセくんって鏡見る?
長谷川
見るよ。
島本
僕、あんまり鏡見ないんだよ。でも最近髪の毛を伸ばして、キャップを被らなくなったの。そしたら前髪がちゃんとセンターで分かれてるかどうか見るようになって。でも鼻毛なんて細かいディテールまで見ないからさ、気づいたらあれっ? てことがあって。
長谷川
ああ、でもねえ、俺も若い頃はいっつも帽子被ってたし、顔すらも洗ってたかどうかって感じだったの。床屋にも数ヶ月に一回しか行かなかったし。坊主頭だった時なんて、自分で剃って終わりって感じだったから。でも段々、歳を取ってくると、髭面のボサボサ頭に白髪が混じってきて、肌もガサガサだと、全然笑えなくなってきたんだよね。みすぼらしいっていうか。それで段々、きちんとするようになった。
島本
帽子でごまかせてたけど、この髪型にしてから被らなくなってね。あと去年デビューした。化粧水。
長谷川
やったほうがいいよ。俺も化粧水付け始めたら、周りの友達の肌のガサガサ具合が急に気になりはじめて、みじめな姿にしか見えなくなった。肌の手入れのやりすぎは気持ち悪いけど、なにもしないで汚いままだと、周りの人が不快に感じるんじゃないかと心配に思う(笑)。
島本
鼻毛とかね(笑)。気をつけます。
長谷川
それ、作ったスーツ?
島本
そう。
長谷川
いいね。塁くん、ちょっと太ったじゃない。
島本
太ったよ(笑)。20代から比べれば15キロぐらい。
長谷川
たまにしか会わないから変化がすごくわかるっていうかさ。丸くなったじゃない。だからスーツも似合うよね。昔はガリガリだったもんね。
島本
ハセくんに初めて会った20代前半とかは、54キロくらいだった。ジーンズも28インチとか履いてたし。
長谷川
出会った頃は痩せてたよね。痩せてた時代にロンドン行ったよね。俺の初めての海外出張が、塁くんと行ったロンドンだったんだよね。塁くんがまだ、relax編集部にいた頃。
島本
そうそう。ロンドン。ずいぶん前になるよねぇ。
長谷川
あの時に見たロンドンと今見るロンドン、全然違うよね。あの頃のショーディッチは、人もまばらだった。懐かしいね。あの号は、(中島)敏子さんが主体になって作られた号だったね。ファッション特集だったし。で、岡本(仁)さんの名前が編集長として出た最後の号だったね。
島本
岡本さんにはよくしてもらった。好き邦題やらせてもらったし。僕、24歳とかで。「はい、ビーチサンダル」って言われて、たったひとりでビーチサンダル作ってる人に会いにサンフランシスコに行ったりして。今から考えると、よく任せられるなあって。
長谷川
そうだね。良くしてもらった。学ばせてもらったな。たまにタイアップで岡本さんと二人で仕事をしていたんだけど、岡本さんって、撮影が終わると「じゃっ」て感じでいなくなるの。みんな「メシとかどうすんの?」って(笑)。でも楽しかった
島本
撮影が終わったらスタッフとご飯食べようか、ってなるよね。でもそういう感じじゃないんだよね。
長谷川
そう。だから勝手に領収書切ったりして(笑)。そういうところも任せるっていうかね。だってrelaxの現場って、編集者もライターもいないことあったよ。ある意味すごいなって。
島本
あの任せ方は才能だと思う。それに困ったらちゃんと助けてくれるから。……なんか好き放題だったなあ。遠い昔の話だけど。
長谷川
マガジンハウスは入社すると、最初はみんな一回編集部じゃない部署に入るんだよね。塁くんも最初は販売部にいて。
島本
そう。そのあとrelax。ファッションの編集なんてしてなかったから、ファッションページ任されると結構きつくて、先輩にものすごく怒られた記憶があるなあ。だって入りたての若手が、大御所のスタッフさんと仕事するわけじゃない。ロケバスで「仕切りがなってない!」って言われて、すみませんすみませんって。でもわかんないんだもん。
長谷川
若手って、教えても教えても、できないものはできないもんね。
島本
いろんな現場を踏んで身につけていくしかないと思う。
長谷川
でも、今思えばあの時間があってよかったんじゃない?
島本
いやもう、全然良かったよ。なんだかんだ、僕が編集部にいたのって1年半くらいだったけど、超濃厚だったし、たくさん学んだ。
長谷川
それで岡本さんが編集長を辞めて、relaxもリニューアルして。
島本
僕は少しだけリニューアル後のrelaxに残って。でもこれからどうしようかなって色々考えて、そもそも会社ってものが自分に合ってないのかなあと。就職も一社しかしてないの。どこかに勤めるのがあまり向いてないと思うんだよね。
長谷川
そういうのもあって、会社を辞めて大学院に入り。ていうか塁くんってそもそもすごい高学歴だよね。京都大学の何学部だったの?
島本
教育学部。
長谷川
教員免許持ってるんだっけ。
島本
持ってない。取らなくてもいい学部なんだよね。
長谷川
でもさ、京都大学を出て、マガジンハウスに入り、relax編集部で編集者をしていました、って、すごいよね、履歴書が。で、さらに藝大でしょ?
島本
経歴だけは(笑)。東京藝大は中退しましたけどね。
長谷川
映像を学びたかったんでしょ?
島本
そうだね。もともと学部生のときに映画サークルに入ってたんだけど、女の子に裸になってもらって撮影したら、その子の親にめちゃくちゃ怒られたことがあって。
長谷川
許可なくやらせたってこと?
島本
いやいや、ちゃんと同意のもと、出演者もスタッフもOKして作ってたんだよ。浴槽で男の子とキスをするシーンで。もしかしたらその子は本心ではやりたくなかったのかもしれないけど、お母さんから電話がかかってきて。それでもうサークルには出入りしなくなって。
長谷川
そうなんだ。。
島本
半年くらいで怒られて、そのあとは自分で撮ったり、まわりの人の手伝いをしたりして。会社を辞めて大学に入り直そうと思ったのは、もともと映像に興味があったのと、おそらく職業として食べていけるんだろうっていう打算もあったといえばあった。それで藝大に行ったんだよね。でも藝大は作家を作る学校だから、結局アーティストにならなくちゃいけない。やってみたら、あんまり自分が作家気質じゃないことに気がついて。
長谷川
なるほどねえ。それでフリーランスとして撮るようになるんだ。
島本
そうなんだよ。