ファッションディレクター・スタイリスト
長谷川昭雄の
第三回

滑りながら考える。

SOUSHIさん
Kirime/DJ
今シーズンのモデルになってもらった人たちに、
スタイリスト長谷川昭雄が気になることを
聞いてみる対談シリーズ。
第3回は、モデルとしても活動する
スケーターでDJのソウシさんに聞いてみました。
長谷川昭雄
ニューヨークにはどれくらい行ってたの?
SOUSHI
2週間半くらいですね。もともと友達の家に泊まるはずだったんですけど、前日にダメだって言われて。知り合いがAirbnbを取ってたんでそこに泊まって。最終的に泊めてもらえたんですけど。
長谷川
泊めてくれたんだ。なんで嫌って言ってたの?
ソウシ
ニューヨークで床屋をやってるヤツなんですけど、「ちょうど沖縄出張で、家も空いてるから使っていいよ」って言われてて。でも連絡したら「沖縄にいるからムリだ」って言うから、あれ?みたいな(笑)。でも、今回ニューヨークでDJもやらせてもらえたし、ニューヨーク限定でカセットも作ることになって。
長谷川
また作るんだ。
ソウシ
そうですね、最初は前のテープのリバイバルみたいな感じでって言われたんですけど、新しく作りたいなと思って。
長谷川
じゃあ大変だね。
ソウシ
意外と一発録りで録ってるんで、時間はかかるんですけど。
長谷川
ああ、一発録りなんだ。なんか意味はあるの?
ソウシ
もともとカセットデッキで1時間くらい録音したのを、DJがミックステープにして売ってたじゃないですか。で、俺はどっちかっていうと作り込まれたミックスCD世代だったんですけど、逆に途中でエフェクトが入るのが嫌いというか。曲を聴きたいのに色々入ってくるのも……。
長谷川
余計なことをしたくない。
ソウシ
そう、なんか普通に聴きたい。
長谷川
ははあ、なるほどね。
ソウシ
作り込むこともできるんですけど、アプリケーションを使えば。
長谷川
音をちょっと変形させたりとか。
ソウシ
そうなんです。でも、俺はミックスは昔の一発録りのほうがいいなと思ったので、そういう形で作ってみたいなと。これまで5枚くらいCDを作ってて、全部一発録り。音量はマスタリングしてもらってるんですけど。そこに意味はあるのかなあと思いながら続けてます。
長谷川
うんうん。
ソウシ
今回初めてアナログでやったんです。前はDJするみたいにパソコンでターンテーブルを繋いでやってたんですけど、ちょっと飽きちゃって。レコードを集めてたんで、これでミックスつくってみようと思って作りました。
長谷川
あ、これ全部レコードなんだ。
ソウシ
そうです。最初の声だけボイスレコーダーを使って。これからずっとレコードだけで作るわけじゃないんですけど、好きなタイミングで、好きな曲が集まった時にやれたらなと思っています。
長谷川
ソウシって何年生まれだっけ。
ソウシ
1998年ですね。
長谷川
1998年なんて、一般的にはもうレコードじゃないよね。流行ってはいたけど。
ソウシ
MDですかね。ちょっと記憶あるのは、家族で車で出かける時に、MDをデッキに入れてたなあって。
長谷川
ああ、MDだったかもね。
ソウシ
家で聴くのはCDが多かったですね。レコードは周りで使ってる人はいなかったです。
長谷川
CD-Jってその頃もうあったんだっけな。でもDJも、レコードが多かった気がする。友達の家に行くとターンテーブルがあったし。ソウルとかR&Bとかってさ、その頃に結構流行ってたの。俺の周りだと多かった。今思えば、安室奈美恵とかスピードとかもそういう流れを意識してたんじゃないのかな。
ソウシ
親がその世代なんですよね。ソウルとかR&Bとかが好きで普通に聴いてて。俺は小さかったし、あんまり好きとか嫌いとかなかったですけど、大きくなってヒップホップを好きになって。ある日ソウルも聴いてみようと思ったらハマっちゃって。そこからレコードを集めたり、曲を探したりしてますね。
長谷川
うん。だからなんかすごい懐かしい気がする。ちょうど二十歳くらいの頃の、友達が作ってた感じ。
ソウシ
それこそ長谷川さん世代の人に渡すと、「懐かしい感じがしたよ」って言われますね。こういう曲を自分たち世代に聴いてほしいっていうのがあって。多分、自分の世代って偏ってると思うんですよね、音楽の趣味が。ヒップホップならヒップホップ、ロックならロックとか。俺はヒップホップから入って、サンプリングされた音のルーツとかを掘るのも好きなんですけど、そういう音楽の楽しみ方もわかってくれたら面白いのかなと思ってですね。自分も先輩方からそういうの勉強してきたんで。まあ、同い年でこういうこと……やってるやつがあんまいないっていうか。
長谷川
いなそうだよね。
ソウシ
はい(笑)。東京にはいないですね。神奈川のほうにはひとりいるんですけど。
長谷川
まあでも、ちょっと違うことやってるほうがいいよね。じゃあ、ソウシは今はもうDJを極めていこうっていう?
ソウシ
そうですね、イベントを自分で企画していきたいなと思っていて。11月の頭に下北の『カウンタークラブ』のオープニングでDJして、そのあとも土曜日に自分の枠を作ってもらって、12月7日にはビートメイカーとDJやってるブダさん(Budamunk)をゲストに迎えてやります。なるべくレコードオンリーのパーティで。
長谷川
レコードいいよね。最近、聴くようになってさ。
ソウシ
あっ、ほんとですか。
長谷川
うん。でもただのポータブルだから、もっとちゃんとしたので聴きたいなと思って、友達に言ったら2台余ってるっていうからもらった。でもアンプもスピーカーもないから、僅かに音が鳴ってる感じ。でも気持ちいいんだよね。
ソウシ
俺は「今日は3000円」とか決めて、その中から選んでます。
長谷川
キリないもんね。
ソウシ
結構悩みますね。だから何も調べずに三枚選ぶとか、ルールを決めたほうが逆に追い込まれて探せるというか。ひとりでゲームしてる感じですかね。それで新しいものに出会ったりするんで。
長谷川
モノとして面白いよね。置いておくだけでも存在感があるし。今って音楽がデータになっちゃったから、あんまり曲名も覚えられない。まだCDを聴いてた時のほうが、なんていう曲なのかなって認識出来ていた気がするんだけど。
ソウシ
そうですね、レコードは買うから思い入れもあるし、結構聴き込んでると思います。
長谷川
ジャケットを見たり、パッケージを開けたりして、ああこういうイメージなんだなっていうのも楽しいし。それが曲を覚えることに繋がっていくっていうか。最近はそういうきっかけがないから。AppleのHomePodっていうスマートスピーカーでデジタル音源は聴いてるんだけど、あれって「何々を流して」って言わないといけなくて。少し照れ臭い時がある。
ソウシ
ああ、Siriみたいなやつですか。
長谷川
うん。でも言うにも、曲名を覚えてないからその「何々」が言えない時もある(笑)。言ってみても滑舌が悪くて違うのが流れちゃったり。
ソウシ
ああ〜、洋楽だとそうなりますよね。でもストリーミングも必要なことではあるかなとは考えていて。やっぱりいろんな人に聴いてもらわないと、評価というか、良い悪いはつけられないと思うので。そこから経由して、レコードだったりカセットだったりを買ってくれたらいいなって思ってるんですけど……。まあ、どこも厳しいみたいですね。
長谷川
そうだよねえ。
ソウシ
そういえば、俺がカセットを作るようになったきっかけって、オーストラリアに撮影で行った時にレコ屋で長谷川さんがカセットを見てて、あ、俺もカセット聴いてみよう、みたいな。そこから昔のビートテープを掘ったり、『ディスクユニオン』でテープ探したりしたんですよね。
長谷川
レコードもカセットも、ジャケットが面白いなみたいなところあるよね。
ソウシ
そうなんですよ。自分の作品のインスピレーションにもなるし。
長谷川
俺も写真にまつわる仕事だから、レコードのジャケを見るとなんでこの人はこういうビジュアルにしたんだろうとか考えちゃって。そう思いながら見ると、すごく面白かったりすんだよね。
ソウシ
面白いですよね。たまに意味がわからないジャケットもあるんで。
長谷川
昔のほうが写真というものが貴重だったと思うから、作ることに対して丁寧な気がする。最近の、デジカメになってからはまた違うのかなって。
ソウシ
枚数が決められてると一枚一枚ていねいになりますよね。最近それでフィルムカメラ買ったりしました。自分でも撮れたらいいなあと思って。
長谷川
うろ覚えなんだけど、確かオーストラリアで買ったんだと思うんだけど、ラッパーのジャケットで、LL Cool Jが被ってた〈カンゴール〉のポークパイハットを、車で踏みつけてるビジュアルがあって。帽子は、端っこのほうに写ってるだけ。よく見ないとわからないんだけど、カセットテープ内の形状に写真をトリミングした状態でもちゃんと帽子が入るように、なんとかギリギリ収まってんの。レコードだとどういうトリミングかはわかんないんだけど。
ソウシ
意味をきちんと考えてデザインしてるっていうのが面白いですね。
長谷川
今の時代って、そんなくだらない写真を、わざわざ撮らないんじゃないかと思って。昔は、インスタもないわけだから、写真っていうメディアにすごく意味を込めてやってるっていうか。
ソウシ
確かに、ジャケットって作るのが難しいですね。このカセットのジャケは、カメラやってる子に半日付き合ってくれって言って、学校終わりに車でピックして。
長谷川
この写真は、印象深いよね。
ソウシ
けっこう色々写真あったんですけど、最終これが一枚ポンて感じで。自分が子供の時の感じにしたかったんで、生意気な感じもありつつ、自分より幼い子のほうがいいなと思って。
長谷川
なんかね、90年代初頭の時代感がすごい。
ソウシ
見た目はヒップホップっぽいけど、聴くとソウルとかも入ってて。ギャップで面白いかなあと思って。
長谷川
でも昔って、ヒップホップとかソウルとかR&Bってごちゃまぜな印象があった気がする。今より分かれてないのかな。スケートとヒップホップも近いし、なんならロックも近いみたいな状態が90年代初頭は特にあったかもしれない。
ソウシ
今も結構そんな感じだと思います。ロックを聴くやつがいて、ヒップホップを聴くやつがいて、そのへんはわりと一緒にいるっていうか、近いですね。その他の音楽が好きなやつもいますけど。面白いのは、聴く音楽で滑り方が違ってくるっすね。ロックだとガンガン攻めて、ヒップホップだとちょっと緩いっていうか。いろんなスタイルがあって面白いですね。