井上尚弥とクリスマス決戦 -豪州の新鋭サム・グッドマンの素顔

Sam Goodman

 

次期挑戦者として浮上する豪州の新鋭

マーロン・タパレスに10回KO勝ちで世界スーパーバンタム級4団体統一を達成した井上尚弥。その偉業達成後、次なる対戦相手として注目を集めているのが、IBFとWBOのランキングで1位に位置する豪州の新鋭、サム・グッドマンだ。ルイス・ネリやムロジョン・アフマダリエフらと共に、モンスターの次期挑戦者として名前が挙がるグッドマン。その実力と素顔に迫る。

豪州ボクシング界の新星

1998年10月生まれの25歳、ニューサウスウェールズ州アルボインパーク出身のグッドマンは、身長・リーチともに169センチの好身長ファイターだ。現在17戦無敗7KOと、プロキャリアは比較的浅いものの、その実力は本物。
WBO世界スーパーウェルター級王者のティム・チューと同じ「ノー・リミット・ボクシング・プロモーションズ」に所属し、豪州ボクシング界の新星として期待を集めている。

アマチュアからの輝かしい軌跡

アマチュア時代から頭角を現していたグッドマンは、オーストラリアン・フットボール選手だった少年時代にボクシングの魅力に取り憑かれた。アマチュア時代には100戦以上の経験を積み、4度の国内チャンピオンに輝く。2017年にはハンブルクで開催された世界選手権にも出場。東京五輪出場は叶わなかったものの、その経験を糧にプロ転向を決意し、2018年4月にデビューを飾った。

重要な勝利で証明された実力

グッドマンの実力が真価を発揮したのが、今年3月のTJドヘニー戦だ。
元IBF世界スーパーバンタム級王者との一戦で、グッドマンは圧倒的な内容で3-0の判定勝利を収めた。続く6月には、井上の対戦相手として注目されていたライース・アリームとのIBF1位決定戦を2-1の接戦で制し、世界挑戦への切符をつかんだ。

10月には米国のミゲル・フローレスと対戦。8回には左ボディでダウンを奪うなど攻勢を見せ、12月のゾン・リュウ戦でも完勝を収めている。試合を重ねるごとに成長を見せるグッドマンだが、その実力はWBOバンタム級王者のジェイソン・マロニーからも高く評価されている。

高い評価を得る卓越した技術

「サムはものすごい才能の持ち主。特に距離感のコントロールは驚くべきレベル」とマロニーは語る。実際に何度もスパーリングを行ってきた経験から、「世界チャンピオンになるポテンシャルは十分にある」と太鼓判を押す。

世界を見据えた成長への取り組み

自身の成長に貪欲なグッドマンは、ドヘニー戦前にロサンゼルスへ渡り、2階級制覇王者のジェシー・ロドリゲスやアザト・ホバニシアンらとスパーリングを実施。また、英国では井上と対戦経験のあるポール・バトラーとも手合わせを行うなど、世界レベルでの経験を積極的に積んでいる。

技術派ボクサーとしての哲学

ボクシングスタイルの形成に影響を与えた選手として、グッドマンはワシル・ロマチェンコとオレクサンドル・ウシクの名を挙げる。「2012年のロンドン五輪で彼らの試合を見てから、完全に虜になった」と語り、技術重視のボクシングを追求する姿勢も特徴的だ。

リング外では、イタリア製バイク「ドゥカティ」を愛好し、友人との交流を大切にする一面も。最近の試合後には「1年後には必ず世界チャンピオンになっている」と、自信に満ちた発言も飛び出した。

モンスターへの挑戦

井上との対戦が実現すれば、グッドマンの卓越した距離感とテクニックは、モンスターにどこまで通用するのか。豪州ボクシング界の新星が、世界最高峰の舞台で輝きを放つ日は近いかもしれない。ただ、その前に立ちはだかるのは、まさに「モンスター」と呼ばれる男。グッドマンの挑戦に、世界のボクシングファンの注目が集まっている。